Wreck Dive in Chuuk 平安丸

heianmaru

 

 

 

 

 

 

 


平安丸【へいあんまる】 種別:特設潜水母艦
総トン数11,616トン/全長163m
進水1910.4.16/沈没1944.2.18
船舶会社:日本郵船/船種:貨客船

 

この平安丸は、現在は横浜で見ることのできる氷川丸の姉妹船です。奇襲を受ける以前は、この平安丸と氷川丸、他もう一隻の姉妹船である日枝丸で、神戸‐シアトル航路の花形として航行していました。

日本郵船が初の太平洋航路シアトル線を開設した後、それまで使用していた貨客船の老朽化により他国に太刀打ちできす、政府からの多額の補助金を受けながら建造した3隻のうちの一つです。3隻の中でも一番の大型貨客船であり、外国の船建技術が取り入れられ、船首楼甲板、船尾楼、ロングブリッジデッキ、また船内にも公室、プロムナードデッキを持つ、客船としての設備は万全でありながらも、貨物収容も多量である旅客船と貨物船の両方をうまく調和させ創り上げたとても華やかな最高傑作でした。

ところが世界大恐慌の煽りを受け、処女航海からわずか10年ほどで最後の航海を迎えます。

その後平安丸は、特設潜水母艦として海軍に入り、かつての花形貨客船の船室は潜水艦乗組員の休養所として使用され、船倉には魚雷、食料、物資などで埋め尽くされました。潜水母艦は、その名の通り潜水艦隊の母艦として、物資補給、また居住空間、そしてダメージを受けた時の修復ができるような工場のようなものも持ち合わせなければならず、大型優秀貨客船として作りあげられた平安丸が、特設潜水母艦として改装されたのは当然のことだったのかもしれません。軍艦としてでなく、貨客船として建造された艶やかで華やかな平安丸が、迷彩柄に塗り替えられた姿は、また違った意味で何とも大迫力だったでしょうね。

ところで、同じ時代を過ごした姉妹船の氷川丸が、なぜ横浜港にあるのかが気になります。
平安丸と同じ頃、氷川丸、日枝丸は共に海軍に使用されました。日枝丸は平安丸と同じ潜水母艦となりましたが、このチュークが奇襲を受ける1年ほど前に雷撃を受け沈没の記録があります。
そして氷川丸は海軍の特設病院船となりました。そのおかげで致命的な雷撃を受けることなく、日本郵船が誇る大型船の中では無事に終戦を迎えることができたのです。戦後、復帰し北アメリカ航路を就航していましたが、その後は売却され、今では横浜でその姿を見ることができるという訳です。

今では、平安丸がチューク環礁内で一番大きな沈船になります。(今では、というところにまた経緯があるのですが、それについてはまた今度・・・)横浜港で姉妹船である氷川丸を見たことがある方は、船体の大きさを実感することができるかと思いますが・・・。

ダイバーにはこの方がわかりやすいかもしれませんね。

東洋のガラパゴスと言われる、あの小笠原諸島。世界中のどこから来てもこれに乗らねば上陸できない小笠原海運のおがさわら丸。あのレトロな感じの船体が、旅のおもひでにより一層厚みが加わります。あの通称おが丸は、総トン数6,700トン、全長は131mです。まだご経験がない方、イルカと泳ぎに行く時に乗る、主に東京港から三宅島・御蔵島八丈島を就航する、東海汽船さるびあ丸は総トン数4,965トン、全長は120mほど。(ちなみに、かめりあ丸は3,837トンともう一回り小さくなります)じゃあ熱海港から初島へ行く時に乗るあれは?富士急マリンリゾートのイルドバカンス3世号、総トン数292トン、全長44m。(イルドバカンス2世号は、184トン、41m)
平安丸は総トン数11,616トン、全長163m。数字だけでも抜群に大きいですね。(氷川丸は姉妹船と言っても、平安丸よりほんのちょっとだけ大きいみたいです)


平安丸は、海底に横倒しで沈んでいます。左舷側が下です。全長161mの姿を船首から最後部まで確認することができる沈船です。161mとなれば、もう完全にビルですよね。潜降して甲板に降りたら、まるでコンクリートの地面の上のように感じます。


これは船首右舷側の“平安丸 HEIAN MARU”の文字です。NとMの間がちょっとだけ広くなっているのがムフフな感じ。
平安丸と氷川丸、そして日枝丸の三姉妹船、すべて頭文字は“H”始まるんです。そしてそこにどこまでも続く、たくさんの丸窓はそのまま残っています。

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そしてこの船のグ〜なところはこれですね。
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スクリューです。
さすが大型客船、スクリューは2基。ほぼ完全な状態で残っています。左舷側のスクリューがちょっと深くなるので、船首からスクリューまで1ダイブで全て堪能しようとすると、かなりハイスピードなダイビングなります。


上向きの右舷側甲板上は15m前後と比較的浅め。ここでも十分に平安丸を堪能できます。それが一番上の画像です。ここはデッキ通路。横倒しなので、画像右側が船底になります。横倒しでなくても広いですよね〜。この広さが、大型優秀船なんでしょうね。そして右下にうっすらですが、潜望鏡が見えます。無造作に置いてあるようですが、ここデッキに潜望鏡を置くことは、大型船ならではのロングデッキがベストポジションでしょう。特設潜水母艦だからこそ、残された産物です。



PHOTO BY/AKANE HAMADA
          KATSUHIDE MIYAUCHI